フォント「辻」のお話
皆様の周りに「辻さん」はいらっしゃいますでしょうか?
普段使用しているパソコンで文字を入力する際、
書体によって「辻」のしんにょうが1 点から2 点になっていませんか?
Windows の標準書体のMS 明朝やMS ゴシックはWindowsXP からWindows Vista にアップデートされた際に変更されています。
WindowsXP までに搭載されていた標準のMS フォントは(JIS90 字形)を採用していました。
ですが、Windows Vista からは(JIS2004)が採用されるようになりました。
このため、WindowsVista から、一部の文字がWindowsXP の頃と形が違うという問題が起こります。
有名なのがこの「辻」の字です。
「辻」の場合、(JIS90)ではしんにょうの点が1 つなのですが、(JIS2004)ではしんにょうの点が2つあります「辻」。
この「辻」の他にも(JIS2004)で変更された漢字が168 文字、第三水準漢字に10 文字が追加されています。
Mac OS もやはり標準フォントが(JIS2004)になっており通常「辻」はしんにょうの点が2つで表示されます。
Mac の場合、MS 書体ではなく、ヒラギノフォントが標準フォントとなっています。
例えばヒラギノ明朝の場合(JIS90 字形)と(JIS2004)ではフォント名が違い、(JIS2004)ではフォント名の一番後ろに(N) が付いています。
これはフォントメーカーが気づかないうちに違う形に変わってしまう事を防ぐため、フォントの名前に「N」を加えることによって、N あり(JIS2004)・なし(JIS90 字形)を別のフォントとして使い分けができるようにしたのです。
もちろん(JIS90 字形)のヒラギノ明朝から(JIS2004)のヒラギノ明朝N にフォントを変更した場合字形も変わってしまいます。
ですからフォントを選択する場合、理解してN フォントを使用するか、しないかを決めなくてはなりません。
ただし(TTF)TrueType フォントでは、JIS2004 字形の書体が少なく、フォント名にN をつける習慣もありません。製品によって区別の仕方はまちまちとなっています。
Windows に標準搭載のMS ゴシックやMS 明朝、Office 製品付属のHG フォントなどは、Windows Vista の登場以降、順次、同名のままJIS2004 字形に変更されています。
同じフォント名でJIS90 字形のものもあればJIS2004 字形のものもあり、名前では区別できませんのでご注意ください。
MacOS やWindows に標準搭載されている游明朝や游ゴシック、游教科書体などの游書体もフォント名にN が付いていませんが、JIS2004 字形のフォントです。
字形を切り替えて使う仕組み
【IVS (Ideographic Variation Sequence) 】
現在多く使われているOTF(OpenType フォント)は書体の中に異体字が含まれているので、印刷会社やデザイナーが使用しているDTP ソフトウェアのAdobe Illustrator やInDesign などであればJIS90 字形とJIS2004 字形を文字単位で切り替えて制作することができます。
またWindows10 や11 の場合、Microsoft IME の設定を変更し、変換する際に異体字が候補に出てくるようにもできます。
Windows10 の場合
- IME の【プロパティ】を開く
- 【詳細設定】を開く
- 【変換】タブの【詳細設定】を開く
- 中央より下の【IVS (Ideographic Variation Sequence) を含む文字を制限する】から【変換文字制限をしない】 へ変更する
ただし異体字切り替えは、書体によって対応していないものや収録されている異体字が異なるため、意図したとおりの異体字で表示されないこともあります。
名刺や名簿、宛名など人名や地名を入力する場合には特に気をつけてフォントを選ぶようにしましょう。